「正直、楽な仕事ではないです」——キッチンカーオーナー28人に聞いた開業のリアル
キッチンカーは「1年で5割、3年で8割が廃業する」と言われる世界です。
その中で、当店(サニーズクレープ)には10年、15年、18年と続けているオーナーが何人もいます。なぜ続くのか。それを知りたくて、全国のオーナー28人全員にアンケートを取りました。
この記事では、その回答を——良い話も、耳の痛い話も、そのまま——お伝えします。「クレープはサニーズしか買わない」と言われた喜びも、「朝10時から17時まで出店して1個しか売れなかった」日のことも。これからキッチンカーを始めようとしている方に、一番役に立つのは加工されていない現場の声だと思うからです。
なお、回答者のプライバシー保護のため、この記事では名前を伏せ、経歴と年数で表記します。
前職は、驚くほどバラバラでした
まず、オーナーたちが何をしていた人たちなのかを並べます。
電機メーカーの会社員。営業職のサラリーマン。市役所職員。介護のケアマネジャー。医療関係。美容師。事務職。主婦。製造業の工場勤務。レストラン店長。八百屋と酪農ヘルパー。アパレルと工場勤務。マクドナルド10年のクルー。携帯販売。たこ焼きの移動販売。パワーストーン店の自営業——。
飲食経験者は一部で、大半は「クレープはおろか、飲食も未経験」からのスタートです。開業の理由もさまざまで、「勤務先の閉鎖で決断を迫られた」「病院が閉院することになった」「コロナ禍で勤め先が事業を縮小した」という止むに止まれぬ転身もあれば、「子どもを最優先にできる働き方をしたかった」「定年を機に、退職金と気力があるうちに挑戦したかった」「20代からずっと独立したかった」という選択の転身もあります。
加盟前の不安は、ほぼ全員が同じ2つでした
「加盟前、不安だったことは?」という質問への回答は、面白いほど一致していました。
「出店場所の確保ができるのか」と「利益を出して生活していけるのか」。
28人のほとんどが、この2つのどちらか、または両方を挙げています。「何も分からないことだらけで、続けていけるか不安でした」(元製造業・10年目)。「フランチャイズ1号店だったこともあり、他店の成功例がなかった」(FC1号店・18年目)。「美容師一筋の人生で、この年からやっていけるのか」(元美容師・50代で開業)。
これからキッチンカーを考えているあなたが同じ不安を抱えているなら、それは正常です。今続いているオーナーたちも、全員そこから始まっています。
正直な本音:「楽な仕事ではないです」
アンケートには「正直に書いてください」とお願いしました。返ってきた言葉を、そのまま載せます。
「正直に言って、楽な仕事ではないです。僕が始めた時より、ずっと、新しいキッチンカーをとりまく環境はきびしいです。それでも成功する方はいます。覚悟をもって真摯に向き合える方が向いていると思います。売上だけをもとめるのであれば、別の商材をおすすめします。」
元医療関係・4年目
「沢山の方が並んでいただけるような時の提供スピードにもよりますが、無茶儲かるほどには恐らくならないと思うので、この仕事が好きだと思える方でないと続かないと考えます。」
元営業職・4年目
「決して楽に稼げるという仕事ではありません。キッチンカーが増えた昨今は特にです。」
FC1号店・18年目
「商売を、なめんなよ。思ってるより楽じゃないからね。」
開業前の自分にアドバイスするなら、という質問への回答・7年目
本部がこれを載せるのかと思われるかもしれませんが、載せます。当店のYouTubeでも一貫してマイナス面から話してきました。実際、あるオーナーは加盟の決め手を「加盟店を増やすのを最優先するオーバートークでなく、現状をそのままYouTubeで表現されている点」と回答しています。良いことだけ言う本部を、オーナーは選ばなかった。だからこの記事も同じ方針で書いています。
一番つらかった瞬間
「一番つらかった瞬間は?」への回答も、隠さず並べます。
- 「朝の10時〜17時出店で、1個しか売れなかった時」(16年目)
- 「利益が出なくて、支払いができなくなりそうな時」(6年目)
- 「初めての夏、売れないし、車内温度は50℃にせまる勢いだし、それでも決まって出ていくお金はあるし、限界を感じて本当にやめようかと思いました」(4年目)
- 「開業当初はがんばって準備したのに全然売れなかったり、他店の行列を見て、努力が報われないと落ち込むことも多かった。当時は泣きながら帰ってきたりしていた」(18年目)
- 「開業直後、早く知ってほしくて頑張りすぎて、体の至る所が痛いまま何ヶ月も我慢して仕事を続けてしまった」(60代で開業・2年目)
- 「お花見の繁忙期は、朝から夜桜まで12時間トイレに行けないことも。満開時期は4〜5日連続で、睡眠時間が1時間程度になったりします」(4年目)
夏の暑さ、体力、売れない日、資金の不安。売上・年収の記事で書いた「1年目がいちばんきつい」「夏が閑散期」は、オーナーたちの実体験そのものです。
それでも、なぜ続くのか
ここまで読むと「やめたほうがいいのでは」と思うかもしれません。でも、28人は続けています。理由を聞くと、これもまた驚くほど一致していました。
ひとつは、お客様の反応が目の前にあること。
- 「クレープはサニーズしか買わない、の言葉」(15年目)
- 「年に1回の出店でも毎年きてくれて、『ここにはクレープに会うためにきました』と声をかけてもらった時」(16年目)
- 「クレープを手渡す瞬間に、時々ですがお客様の目が『キラッ』とした感じに変わる時」(4年目)
- 「オープン当初からのお客様が、16年経った今でも変わらず足を運んでくださること」(16年目)
- 「高校の卒業式の日、『ここから今までありがとうございました』と感謝されて。卒業後、バイトや自分の給料で買いに来てくれる子たちがいる」(4年目)
もうひとつは、自分の人生を自分で運転している感覚。
- 「やることはたくさんありますが、自分のペースで仕事ができて充実しています」(10年目)
- 「会社員時代のストレスはゼロ」(2年目)
- 「収入は減りました。時間の使い方は自分次第なので、サラリーマンよりは自分に合っている」(15年目)——収入が減ったことまで含めて、正直な実感です
- 「自分の人生、自分自身で運転した方が楽しく流れると思います!!」(13年目)
先輩オーナーから、これから始めるあなたへ
最後に、「開業前の自分にアドバイスできるなら?」への回答から、実用的なものを選びました。そのまま使ってください。
- 「1年ほどは収入は安定しないので、運転資金60日分は確保しましょう」(7年目)
- 「想像していた以上に体力が必要だということ」(16年目)——体力への言及は28人中、最多でした
- 「最初から走らず、ゆっくりゆっくり仕事に向き合って。焦らなくても、おいしいクレープを食べてもらえれば、きっとお客様がついてきてくださるから」(60代で開業・2年目)
- 「大手のスーパーなどは出店許可に時間がかかったり、契約するキッチンカーの数を締め切ってしまうところもある。慣れるまでとか考えずに、最初に申請しておけばよかった」(4年目)
- 「イベントに出て、他のキッチンカーと仲良くなること」(4年目)——出店場所の情報は、仲間のネットワークから回ってきます
- 「必要以上に心配しすぎない」(9年目)
- 「確定申告について全く知らなかったので、知識をつけておけばよかった」(18年目)
まとめ:リアルを知った上で、始めるかどうか
28人の声をまとめると、キッチンカーのリアルはこうなります。
- 前職は関係ない。未経験から10年20年続けている人が大勢いる
- 不安は全員同じ。「場所」と「生活」。それでも始めた人だけが、今続いている
- 楽ではない。儲け一本槍なら他の商材のほうがいい
- つらい瞬間は必ず来る。1個しか売れない日も、50℃の夏も
- それでも、目の前の笑顔と「自分の人生を運転する感覚」が、それを上回る
この記事は、開業をおすすめする記事ではありません。リアルを知った上で判断してほしいという記事です。それでも「やってみたい」と思えた方は、こちらの記事で費用・収入・開業形態の実数を確認してください。
この記事について
サニーズクレープは、2007年に長野県諏訪市で1台のキッチンカーから始まり、現在は全国34店舗を展開するクレープのフランチャイズです。この記事は、2026年に実施した全店オーナーアンケート(全28人)の回答に基づいています。引用は原文の趣旨を変えない範囲で表記を整えています。
アンケートに答えてくれたオーナーの多くが、こう言っています。「迷ったら、まず話を聞きに来てください」。良いことだけは言いません。それは、この記事の通りです。
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