キッチンカーの出店場所、断る基準【出店料の上限は数字で決まる】
キッチンカーの売上を決めるのは「出店日数」と「出店場所」です。クレープキッチンカーの年収の記事でそう書きました。
この「出店場所」には続きがあります。良い場所を見つける力と同じくらい、合わない出店を断る力が収支を左右する、ということです。働いたのに手元に残らない日は、たいてい「本当は断るべきだった出店」から生まれます。
断る基準は、感覚ではなく数字で持つべきです。この記事では、全国34店舗のクレープキッチンカーを見てきた本部として、出店依頼を受けるか見送るかの判断基準を、実数で書きます。
基準1:出店料の上限は1万円。開業1〜2年目は、これを超えたら見送る
結論から書きます。クレープキッチンカーの出店料の上限は、1万円と考えてください。
根拠は経費構造です。出店料の適正水準は売上の10%。出店料1万円を10%に収めるには、1日で10万円売る必要があります。日商10万円は年収の記事に書いた通り「大型イベント」の水準で、通常の出店で狙う数字ではありません。つまり出店料1万円は、うまくいった日にようやく適正になる金額です。それを超える出店料は、構造的に採算が合いません。
特に開業1〜2年目は、1万円を超える出店料には出ない判断が必要です。理由は2つあります。
- 見込みを読む実績がまだない。その規模のイベントで自分が何個売れるか、判断材料を持っていない
- まだ早く出せない。高い出店料を回収するには数を焼く必要がありますが、提供速度は経験で上がるものです(次の基準で詳しく書きます)
基準2:固定出店料は、必要売上を先に逆算する
イベント出店では、出店料が「固定制」のことが多くあります。ここに一番の落とし穴があります。
固定出店料1万円は、売上10万円なら10%です。しかし売上2万円なら50%。同じ1万円が、売れるかどうかで適正にも危険にもなる。だから申し込む前に、逆算しておきます。
固定出店料 ÷ 0.10 = この場所で必要な売上
では見込み売上はどう読むか。式は「客単価700円 × 販売見込み数」ですが、販売数の予想には材料が要ります。初めての場所なら、主催者に3つ聞いてください。
- 来場者数(昨年の実績。「見込み」ではなく実績)
- キッチンカーの出店台数(来場1万人でも、飲食が30台入るなら1台あたりの取り分は割られます)
- 昨年出店したキッチンカーの売上感(答えられる主催者は、数字を把握している良い主催者です)
そのうえで、平日の通常出店2〜4万円、イベント6万円、大型イベント10万円という目安のどこに乗りそうかを見ます。読みが平日の下限にも届かないなら、その出店は日数を消費するだけです。
基準3:提供速度という物理限界を、売上予想に入れる
見落とされがちな数字を書きます。クレープは、焼ける枚数に物理的な上限があります。
- 普通の人:1時間に30個
- 相当手の早い人:1時間に50〜60個
- 2人体制:1時間に50個程度
イベントの営業時間はだいたい6時間です。つまり1人で回す場合、ピークが途切れず続いたとしても、普通の腕なら180個・売上約12.6万円が上限。これ以上は、行列がどれだけ長くても焼けません。
ここから2つのことが言えます。
1つ。来場者数が多いイベントほど売れる、とは限らない。自分の提供速度が上限になるからです。「来場5万人だから売上も青天井」という計算は、クレープでは成立しません。
2つ。開業1〜2年目に高額な出店料へ出ない理由がここにもあります。焼く速度は経験で上がるものです。速度が上がる前に大型出店へ出ると、行列を捌けず、売上の上限が出店料に見合いません。
基準4:売上に見えないコストを足してから決める
出店料と売上だけで判断すると、まだ半分です。数字に出にくいコストを足します。
移動距離。片道1時間の会場は、往復2時間の拘束と燃料代がつきます。同じ売上見込みなら、近い場所が常に勝ちます。
拘束時間。搬入が朝7時、搬出が夜21時——営業時間より拘束時間が長いイベントがあります。時給換算する癖をつけると、判断が変わる出店があります。
季節。クレープは夏が売れません。気温が30度を超えるとクリーム系の売上が落ち、35度を超えたらかき氷一択です。真夏の炎天下の屋外イベントは、来場者数が立派でも、クレープにとっては数字が出ない場所になり得ます。
天候リスクの負担。屋外は雨で売上がおよそ8割に落ちます。「雨天決行・出店料固定」の組み合わせは、下振れリスクを出店者が全部背負う契約です。断る理由に十分なります。なお、天候に左右されない形態として買取出店があります。キッチンカーの買取出店とは?相場と獲得方法で解説しています。
上級編:「300個売れる実績」があるなら、2万円までGOが出せる
基準1で「上限1万円」と書きましたが、例外条件を1つだけ書きます。
過去の実績から確実に300個売れると判断できるイベントなら、バイトを1人雇って2人体制で臨む前提で、出店料2万円までGOが出せます。1日の収支はこうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上(300個 × 700円) | 21万円 |
| 食材原価(30%) | −6.3万円 |
| 出店料 | −2万円 |
| バイト代 | −1万円 |
| LPG代 | −5,000円 |
| ガソリン・交通費 | −5,000円 |
| 1日の収益 | 約10万円 |
営業利益率およそ50%。これは文句なしの「いい出店」です。
ただし、これがクレープの上限です。2人体制で1時間50個、6時間で300個——ここから先は人を増やしても提供が伸びず、出店料だけが増えます。出店料2万円超のイベントは、実績が積み上がった店でも見送りが基本線です。
そしてこの判断は「確実に300個」という実績データがあって初めて成立します。データがないうちにこの計算を当てはめるのは、例外の悪用です。
断り方——関係を壊さずに見送る
主催者との関係は資産です。今回合わなくても、来年は条件が変わるかもしれない。だから断り方は「切る」ではなく「キープする」形にします。
「お声がけありがとうございます。今回は出店料と当日の見込みを試算したところ、当店の体制では採算が合わない判断になりました。来場規模や条件が変わる機会があれば、ぜひまたお声がけください。」
数字で判断したことを、数字のまま正直に伝える。感じの悪い断り方ではありませんし、条件交渉が始まることもあります。
正直に書きます——断りすぎも失敗です
ここまで「断る基準」を書いてきましたが、最後に逆のことを書きます。
1年目は、見込みを読むための自分の実績データがありません。読めないうちの多少の失敗出店は、授業料です。実際に出てみて「この規模のイベントでこれだけ売れた」という記録が貯まって、初めて基準2の逆算と上級編の判断が正確になります。売上と出店条件の記録は、初日からつけてください。
そして、断った日数は埋めなければ月商が落ちるだけです。専業なら月商60万円が最低ライン——この数字は年収の記事に書いた通りです。断る判断は、新しい出店場所を探す行動とセットで初めて機能します。
まとめ:出店を断る基準
- 出店料の上限は1万円。開業1〜2年目はこれを超えたら見送る
- 固定出店料は「÷0.10」で必要売上を逆算。見込みは主催者への3つの質問(来場実績・出店台数・昨年の売上感)で読む
- 提供速度の物理限界(普通の人で30個/時)を売上予想に入れる。来場者数が多くても売上は青天井にならない
- 移動距離・拘束時間・夏場・雨天リスクの負担を足してから決める
- 例外は「確実に300個」の実績があるとき。2人体制・出店料2万円まで。それ以上はクレープでは無理
- 断り方は数字を正直に伝えて関係をキープ。1年目の多少の失敗出店は授業料。断る判断は場所開拓とセットで