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クレープ焼き器の選び方——ガス式・電気式・バーナー式を専門店が比較【キッチンカー向け】

クレープのキッチンカーを始めるとき、焼き器は何を選べばいいのか。

結論から書きます。キッチンカーでクレープを仕事にするなら、プロパンガスを使ったクレープ専門のガス式焼き器、一択です。電気式でもカセットボンベのバーナーでもなく、ガスの専門機。19年クレープを焼いてきて、この結論は揺らぎません。

この記事では、ガス式・電気式・バーナー式の3タイプを、火力・仕上がり・コスト・キッチンカーという環境との相性で比較し、なぜガス一択なのかを説明します。焼き器選びの失敗は「美味しく焼けない」「提供が遅い」に直結し、そのまま廃業の原因になります。これから機材を揃える方は、買う前に読んでください。

結論:プロパンガスの専門焼き器を選ぶ理由は3つ

  1. 火力が強い——強火で一気に焼ける
  2. 2連式バーナー——厚い鉄板を均一に熱せられる
  3. 光熱費が安い——カセットボンベの1/2〜1/5

クレープを美味しく焼くために大事なのは、強火で一気に焼けることです。高温で一気に焼くと、生地の水分量を保ったまま、表面はしっかり香ばしく、内側は半生のようにもちもちに仕上がります。そして生地を流すたびに鉄板の温度は下がりますが、火力の強いガス機なら、何枚でも続けて焼けます。営業とはつまり「続けて焼くこと」なので、ここが焼き器選びの核心です。

比較①:カセットボンベのバーナー式——家庭用です。プロは選びません

最近、カセットボンベ(CB缶)+アウトドア用バーナーで焼くクレープ店を見かけます。手頃で小さく、家庭でクレープを焼くには便利です。しかし仕事の道具としては不十分です。理由を挙げます。

火力が半分以下。クレープ専門のガス焼き器の消費熱量が約7,000kcalなのに対し、アウトドアバーナーは約3,000kcal。クレープ用の鉄板は厚さ9mmほどあり、この火力では十分に熱せられません。

冬に火力が落ちる(ドロップダウン現象)。CB缶は、使い続けると気化熱で缶が冷え、ガスが気化できなくなって急に火力が落ちます。気温の低い冬は特に顕著で、厚い鉄板を熱するにはまったく足りません。

1連バーナーでは鉄板が均一に熱せられない。幅40cmの鉄板に対して火の出る場所が中心1箇所だと、火を強めても中心部だけ焦げて、周囲はふにゃっとした生地になります。均一に焼けていないクレープは、生地を見ればわかります。

提供が遅くなる=売上の上限が下がる。売上は客単価×客数、つまり回転です。行列が長くなるほど、買うのを諦める人が出ます(機会損失)。当店では1人で1時間に60個、大型イベントでは1日300〜600食、最大1,500食を提供しますが、家庭用バーナーの火力では、この回転は物理的に不可能です。

ランニングコストが高い。プロパンガスは地域差がありますが平均でkgあたり300〜500円程度。対してCB缶は250g入りで1本200〜300円。光熱費にして2〜5倍の差になります。プロとして生計を立てるなら、コストにも目を向ける必要があります。

そして安全面。カセットボンベを焼き器の熱源に使うのは、爆発の危険があります。絶対にやめてください。高温の鉄板の近くにCB缶を置く構造は、本来の使い方を外れています。美味しくない以前に、危険です。

比較②:電気式——商業施設向き。キッチンカーには向きません

電気式の焼き器はサーモスタット付きで温度管理がしやすく、便利な機材です。イオンなどショッピングモール内の大手チェーンは電気式を使っています。ただしあれは200Vの専門機です。

キッチンカーで200Vを確保するのは現実的ではありません。すると100Vの電気式を選ぶことになりますが、これが問題です。

固定のテナントや商業施設で200Vが引けるなら電気式は選択肢になります。キッチンカーでは、なりません。

焼き器選びの実務ポイント

ガス式の専門機を選ぶとして、仕様面のポイントです。

バーナーは2連式一択。クレープ用の鉄板は9mmと厚く、これを全体まで均一に熱するには、内側と外側の2連バーナーが必要です。当店は200〜230℃で焼いていますが、この温度域を鉄板全面で安定させられるのは2連の専門機だけです。

鉄板の直径は40cm以上。一般的な生地の直径は30〜38cmですが、鉄板ぎりぎりのサイズだと焼きづらい。市販機には36・38・40・41cmがありますが、余裕をもって40cm以上をおすすめします。

鉄板は厚いものを。厚い鉄板は蓄熱量が大きく、生地を流しても温度が下がりにくい。連続で焼いても仕上がりが安定します。

参考までに、価格はクレープ専門のガス焼き器で8万円前後です(実際の購入価格。開業費用の記事で機材一式の内訳を公開しています)。決して高い買い物ではありません。ここをケチって数万円の家庭用バーナーを選ぶと、商品の質と提供速度という、いちばん大事なものを失います。

よくある失敗:「車に載るかどうか」で焼き器を選んでしまう

最後に、いちばん多い失敗パターンを書きます。

クレープは軽バンタイプで営業する店も多く、「車内が狭くて大きい焼き器が置けないから」という理由でバーナー式を選ぶ人がいます。これは本末転倒です。順番が逆なんです。

キッチンカーを続けていくためにいちばん大切なのは、「美味しくて、また食べたい」と思われる商品を提供すること。そのために必要な機材を決めて、その機材が使える車を選ぶのが正しい順番です。「安く作れるから」「なんとなく可愛いから」で車を先に決め、その車に載る焼き器を探す——この順番で始めた人の廃業率は、とても高いです。

なお、クレープに軽バンタイプ自体をおすすめしません。天井が低い車内で焼き続けると、腰や足を痛める人が大半です。実際、軽バンで始めて後から車を乗り換える人は多い。健康がいちばんです。焼き器も車も、本当によく考えて選んでください。

まとめ

焼き器は、クレープキッチンカーの商品力そのものを決める機材です。開業費用全体の中では8万円前後と大きな出費ではないので、ここだけは妥協しないでください。

開業にかかる費用の全体像、収入の実態、開業形態の選び方は、こちらの記事で公開しています。

強い焼き器と提供力が前提になる「買取出店」については、こちらの記事で解説しています。


なお、焼き器はあくまで前提条件です。同じ焼き器でも、生地のレシピと焼き方で仕上がりは大きく変わります。そこは当店のノウハウの最も重要な部分として、フランチャイズ加盟オーナーに研修でお伝えしています。